研究レポート

CATボンドの活用方法とメリットと注意点

CATボンドの活用方法とメリットと注意点

はじめに

CATボンドは保険化が困難と言われている地震・台風・寒波・ハリケーンといった起こり得るリスクは小さいも発生してしまうと大きな損害を受けてしまうリスクを証券化。そのリスクを金融や資本市場に移転していきます。

CATボンドの発行主体の企業はSPV(特別目的会社)とデリバティブ契約を締結して運用手数料を支払います。SPVは債券を発行して投資家からの資金を安全資産で運用していきます。平常時は手数料と運用益から投資家は利益を受け取ることができます。またリスクが起きてしまった場合は企業はSPVから資金を得ることができます。投資家には企業に支払った金額を償還されるなどの元利の減額が起こります。

リスクの証券化のスキーム

リスクの証券化のスキームは平常時とリスク発生時に場合分けがなされます。

平常時は次のようなスキームになります。

1:企業はSPVとの間で契約をします。SPVは債券などのCATボンドを発行して投資家に販売します。

2:SPVは投資家からの資産を債券などで安全に運用します。

3:企業はSPVに運用手数料を支払います。

4:投資家は債券のクーポンを受け取ることができます。

またリスクが顕在化した場合は次のような形でスキームが実行されます。

5:リスクが顕在化した場合はSPVは信託勘定の資金の全部または一部を取り崩して企業に支払いをします。

6:投資家は満期日に残額と運用益を受け取ります。

提供者

CATボンドの発行には専門的な経験と知識が必要になります。通常は多数の専門家の方が役割を分担して行います。通常はマネージャー・投資銀行・モデリング会社・格付け機関・法的アドバイザーなどが参加します。

マネージャーはデザインの構築・費用概算の見積もり・リスクの定量評価の概算・投資銀行の推薦などのアドバイス・統合調整などを行います。

投資銀行はCATボンドの発行手配・書類作成・宣伝や販売などを行います。

モデリング会社はリスクの定量評価を行います。

格付け機関はCATボンドの格付け債券格付け判断を行っていきます。

法的アドバイザーは組成アドバイスや必要書類の確認さらには税務や規制面の確認を行います。主に弁護士や公認会計士等が担当します。

メリット

CATボンドのメリットには以下のようなものがあります。

資本市場へのリスクの移転ができます。資本市場は保険市場に比較してキャパシティが大きくなります。このため保険市場で引受が困難な大きなリスクに対しても投資家に分散できる可能性が高くなります。

商品設計に柔軟性が出ます。対象となるリスクの種類や元利金の減額などが発生する条件の特定を行うことができます。また契約期間を含めてリスクヘッジを行う側のニーズに合わせて商品を設計することができます。

信用リスクの回避を行うことができます。リスクが明らかになる前に資金を集めることができます。リスクが起こった時に必要な資金はほぼSPVに確保されることが多いです。通常の保険契約では契約者は保険会社の信用リスクを負います。ただSPVを介することで信用リスクを回避することができます。

注意点

ただCATボンドにも注意すべき点が多くあります。

SPVの設立費用・リスク分析・モデリング発行・格付け機関との交渉手数料・マーケティング費用・弁護士費用などの発行のための様々なコストがかかります。CATボンドは商品ごとの個別性が高いので企業が活用をしていく場合にはリスクに見合ったトータルでのコストを勘案していきつつも対応を検討していく必要があります。場合によっては発行するロットを大きくしていくなどの対策が必要になります。

元利金の発生要件が実損填補型・インデックス型など設定方法が複雑になります。またリスクをヘッジする企業側からの恣意的な判断やモラルハザードが起こる可能性があります。このため投資家からは敬遠される傾向があります。投資家側と企業側でリスクが利益相反を起こしてしまう可能性が極めて高いということです。

投資家にとっての情報の透明性をどう確保していくかが大事になります。企業側の方のリスクを守るための情報は多くてもそこに資金提供をする投資家への情報がまだ多くないというのが実際のところです。投資家はある程度格付けというものを目安にしていきます。そのことをふまえてリスクを定量化するなどの具体性を示して投資家への理解をしていくことが大事になります。

活用状況

CATボンドの発行先は世界的にみても保険会社や再保険会社がほとんどです。一企業が発行をすることはめったにありません。日本ではオリエンタルランドなど少数の企業が発行をしただけです。

投資家も年金基金・機関投資家・ファンド・オブ・ファンズ、ヘッジ・ファンドなどの機関投資家が大半です。CATボンドのみに投資をする企業はほんのわずかで複数の分野に投資をする中でCATボンドにも投資をしているという企業がほとんどです。

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