リスクの移転によるメリット
CATボンドの移転者にメリットがある
リスク移転の中の重要な一つにCATボンドがあります。CATボンドでは以下のような点で移転者にメリットがあります。
保険市場の変動による影響の抑止をすることができます。保険価額の高騰や保険市場のキャパシティーの収縮を防止することができます。
保険では移転できない・リスクをカバーしていきます。特に自社の物的・人的被害によるサービスの減少、仕入れ先などのトラブルによって生産が減少、地震の被害によって消費の需要が減少をした場合の収入の減少、相手先の信用の低下による売掛金や融資などの回収難や株価の下落、資金のひっ迫による資金調達方法の困難さやコストの上昇などのケースがあります。そのような場合にリスクの移転場合には保険商品ではあまりメリットがありません。CATボンドの方が資金を回収できる可能性が高くなります。
限定されたリスクの引き受け手の信用リスクは過失の場合の支払い責任については100%の担保を設定できます。
パラメトリックトリガーの場合には実際の損害については査定が必要ないので迅速な支払いが可能になります。
保障とコストを複数年固定することができますので翌年からいきなり条件が不利になることはありません。
東日本大震災とCATボンド
東日本大震災という巨大な災害にもパラメトリック型のCATボンドが発動しました。このCATボンドの発行条件は以下のようになります。
スポンサー:JA共済連
発行金額:3億円
カバー期間:2008年5月から3年間(震災時にはギリギリで要件を満たしたことになります)
クーポン:基準金利に年4.40%の利息を付けます。
リスクの分析会社:AIR
期待損失率:年率0.82%
格付け:ムーディーズでBa2
東日本大震災でCATボンドも大きな影響を受けました。この震災によってインデックスの値がしきい値を超えて発行額の3億ドル
CATボンド市場初の全損になるも市場に大きな混乱は起こらず手続きがほぼ順調に進みました。スポンサーのJA共済連には改めてCATボンドの効用が認識されています。投資家の仕組みについても信頼度が増します。市場の経験値が一層向上していくのではないかと思われます。
CATボンドのリスク
CATボンドを利用していく際のリスクを考えていきます。ベーシスリスク・モデルリスク・為替リスク・担保資産の信用リスク・作業負担及び費用面でのハードルなどがあります。
ベーシスリスクはCATボンドからの回収金額が損失額に比べて想定よりも少なくなる可能性があります。
モデルリスクはリスクの分析に使われている計量モデルが正確でないことによってプレミアムの値に大きな誤差が出る可能性があります。
為替リスクは円で事業を行っていくスポンサーが米ドル建てのCATボンドを発行していく場合に為替によってプレミアムや回収の金額が変動する可能性があります。
担保資産の信用リスクは投資した資産がデフォルトで満額を回収できない可能性があります。またCATボンドの仕組みや条件の欠陥・法務・税務・規制上の問題や変更によって意図した結果にならないリスクがあります。
作業負担のリスクは発行時に発行体の設立・モデル分析・情報開示・文書化などが挙げられます。維持する時には発行体の運営や信託勘定の設定や管理などの問題が挙げられます。
出典
リジリエンス・ジャパン 感染症等災害リスクファイナンス推進戦略会議・第2回会議の参考資料・CATボンドについて