研究レポート

リスクファイナンスの普及方法

リスクファイナンスの普及方法

はじめに

リスクファイナンスの最適化を図っていく場合に欧米に比較して活用し得る手法が限定的といえます。企業のリスクファイナンスへの取り組みを促進していくためにはその最適化を達成し得るリスクファイナンスの活用を可能にしていくような環境整備を行っていくことが重要といえます。

キャプティブの活用

キャプティブをリスクを一元管理してリスクの保有や移転を戦略的に手当てしていくための方法として最も有効な策といえます。日本では一部の先進企業が戦略的なリスクファイナンスの達成やリスクマネジメントの機能的な向上を企図して活用しているほかにも欧米では一般的に活用されています。

日本ではキャプティブそのものの認知がとても低いです。よって国内でキャプティブの設立はまだ難しい段階といえます。このため海外に依存をせざるを得ない状況と言えます。国内でキャプティブを造るとなると、一般の保険会社として設立する・一般の事業会社もしくは特別目的会社として設立をする場合と2通りに分かれます。

保険会社を作るとなると資本金10億円以上という基準とソルベンシーマージン基準等の保険会社特有の基準を課せられることになります。そのため企業にとっては大きなコストになります。また一般の事業会社もしくは特別目的会社として設立となると保険会社でなくなるのでコストが保険と同様になっても損金にはならなくなります。そうなると海外の再保険会社への出再ができなくなります。よってキャプティブを活用した戦略的なリスクファイナンスは期待できなくなります。

これらからキャプティブを設立してのリスクファイナンスを行うことは難しくなります。そのため海外にキャプティブを置くことを最善としているも距離的・言語的・時差などの物理的な障害も無視できません。さらに商慣習上の違いもあるので使い勝手は決して良いものともいえません。

キャプティブを一つの選択肢とした企業の戦略的リスクファイナンスの活用を促していくためにも特定の企業あるいは企業グループのリスクを引き受けていく新たなステータスの保険会社を国内で設立可能とするような制度の整備を行っていくことが大事になります。この制度の効果的な活用を促進するためには、キャプティブの活用実態や国際基準との整合性を踏まえた税務会計上の指針を含めたインフラの整備を進めていくことが重要になります。

ファイナイト保険の活用

ファイナイト保険の活用はリスクヘッジを考える企業とリスクを引き受ける保険会社がリスクのプロファイルを互いに十分把握できていないケースなどで企業と保険会社間での時間軸を活用しながらリスクシェアリングを行うことを考えていきます。そこで一般的な保険では対応困難なリスクの手当てを可能としていきます。会計面の扱いは明確になっていません。ファイナイト保険はすべて個別設計商品なので一口にファイナイトと言ってもその内容は千差万別になります。

したがって一律の会計基準や税務処理方法を規定することはそもそも困難になります。そこから基本的なガイドラインがあることが望ましくなります。特にファイナイト保険の活用が企業の期間損益の平準化を意図したものと考えていくと会計面の扱いの明確化はより重要になってきます。

コミットメントラインの活用

万一に備えて企業と金融機関の間でコミットメントライン契約を結ぶこともできます。有事の際の機動的な必要資金の確保を可能にしていきます。またオフバランスの資金確保で効率的な財務活動を可能にしていきます。ただ金融機関と中小企業間のコミットメントライン契約について、利息制限法などの問題で融資の実行状況によってはコミットメントフィーのところで抵触してしまうのではないかという問題も出てきてしまいます。このため中小企業におけるコミットメントライン活用の阻害要因となっているという声も多くあります。

コミットメントライン契約は、手元資金が少ない中小企業でよりニーズが高いものと考えられます。このため中小企業のリスクファイナンスの最適化を達成する際には重要な手法といえます。交渉力の弱い中小企業等の保護を図る観点にも配慮しつつも中小企業におけるコミットメントライン契約を可能とすることの是非について今後検討する必要があります。

金融機関と企業との間で締結されているコミットメントライン契約では災害発生時等における免責条項の実務上の取り扱いが必ずしも明確にはなっていません。この点について金融機関はその取り扱いを明確化しておくことが必要といえます。

保険デリバティブの活用

保険市場のみならず代替的なリスクの引受け手として金融・資本市場を活用していくことで、保険による引受けが困難であったリスクファイナンスのカバーが可能となります。特に災害リスクについては金融・資本市場にはそれなりの引受けキャパシティがあります。

そこでCATボンドや保険デリバティブの活用が効果的であるといえます。このような金融・資本市場の活用を促進していくことを一般化させていくことで企業のリスクファイナンス手法の多様化を図っていくことも可能になります。

地震リスク対応手法のさらなる多様化

企業での対応が困難な地震リスクへの対応として企業のリスクファイナンス手法の多様化を図る可能性のある場合のスキームについて紹介をしていきます。企業の各参加主体がこうしたスキームの検討を行う場合にはリスクファイナンスの普及や促進及び手法の多様化の観点から経済産業省としても信用保証制度や政策の金融機関などを通してのリスク保管などを用いた後押しを行っていきたいと考えています。そのための方法として中堅・大企業向けの地震専門グループキャプティブと中小・零細企業向けの地震特約付きのCLO・CBOがあります。

地震専門グループキャプティブでは、地震リスクに対するキャパシティを得たい複数の企業がグループキャプティブに出資して地震リスクのポートフォリオを相互に形成していきます。次に一定の分散の効いたポートフォリオの組成をしていくことで元受保険会社による引受けキャパシティだけでなく、一定のリスク保有が可能となっていくことでキャパシティの拡大を図ることが可能となります。そこからグループキャプティブとして再保険市場や金融・資本市場などからのキャパシティを取付けることが可能になります。企業単独では行うことのできない地震リスクに対する追加的なキャパシティを確保することが期待できます。

また地震特約付きCLO・CBOでは被災直後でも手元に資金が残ることを目的にしていきます。大地震の発生をトリガーとして事前に定められた返済不要の見舞金が速やかに支払われます。地震発生後数か月間のの必要資金の確保を事前に行うことができます。現状中小企業では保険料が高いなどの理由で地震保険の付保が困難といえます。中小企業のリスクをCATボンドや地震デリバティブなどを通して海外のリスク引受けキャパシティや資本市場を活用していくことで支払プレミアムを抑えつつも中小企業の地震リスクの移転を可能にしていきます。

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