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米国におけるキャプティブ発展の経緯
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はじめに
キャプティブの利用がアメリカのリスクファイナンスで浸透している理由としては、米国の保険市場に特徴的なアンダーライティングサイクルというものがあります。アンダーライティングサイクルとは保険会社の競争が激しいこともあって損害率の動向によっては保険料が大きく変動します。保険会社は事故が多発していて支払いが苦しくなると保険料を引き上げます。また同時に保険の引き受けにも消極的になります。また保険料収入が入って事故が起こらないと余裕が出るので保険に入るように勧めてきます。これをアンダーライティングサイクルといいます。
このアンダーライティングサイクルだと保険会社と加入企業が利益相反になってしまうのが厳しいところですが、リスクファイナンスが重要であるという企業と必要性があって事業化できるという保険会社側の双方の長所を生かせるということで事業化しています。
1980年代には盛んに
アメリカのキャプティブの設立が本格化したのは1970年代からです。さらにそれが盛んになったのは1980年代の医療過誤や生産物賠償責任での訴訟の増加です。賠償責任保険の支払いが増加して保険料の高騰・限度額の引き下げ・免責金額の引き上げという状況が発生しています。極端に保険購入困難な状況に陥ったこの時期に保険以外のリスク移転手段に期待する動きは急速に拡大していきます。キャプティブの設立数は一気に増えました。
また2000年以降もリスク管理を行う企業側の説明責任が増大をしたこともアメリカ企業のキャプティブの設立が多くなった一因になっています。特に大企業では総合的なリスクマネジメント手法としてキャプティブを活用していく動きが増えてきています。バーモンド州を中心にして米国内のドミサイルでのキャプティブは増加しています。
キャプティブの活用方法
キャプティブの主な活用方法は次の通りです。
1:保有水準の調整での保険料の支出額の安定
2:全社でのリスクの統合的な管理による保険料コストの節約
3:リスクに対する資本の明確な分別管理
4:TRIAへのアクセス
5:付保義務のある種類への自己資金による対応・在外物件の付保規制対応などの規制対応
6:タックスコントロール・ただ実際上節税目的の保険料は除かれます。
その他のリスク手法
アメリカでのその他のリスクファイナンスの方法を見ていきます。アメリカでも過去に労災や賠償責任などの保険料が高騰して保険の購入が極めて困難な事態が数度にわたって起きています。そこから企業自らが保険リスクを保有することでコスト・オブ・リスクのコントロールを行っています。このような状況の下で政府は保険料の規制を一部緩和して、事業者が必要なリスクファイナンスを自己の資金によって効率的に行っていることを支援しています。
1:SIR(セルフ・インシュアランス・リテンション:自家保険)
州の支援として事業者が一般の保険会社に付保することを義務付けられる種目について自己資金による対応を認めていくセルフ・インシュアランス・リテンション制度というのがあります。労災や商用の自動車賠償責任保険などについては被害者保護の観点からはほとんどの州で企業に対して伝統的な保険会社からの保険の購入を義務付けています。その場合は原則として自家保険は認められません。ただし事故の時の支払いに備えた資金を確保していく手段を講じるなどの対応が認められています。この場合に自家保険の資金は信託勘定としたり担保を提供するなどの資金確保の手段を講じていく必要があります。
2:RRG(リスク・リテンション・グループ)
1980年代は医療過誤賠償責任保険が高騰して賠償責任保険を買えないという理由で廃業をする医療機関が相次ぎました。そこから賠償リスク保有法が施行されました。この法律では一定の条件を満たしていく同種の事業者の団体が設立するグループキャプティブについてリスク・リテンション・グループとして設立や運営条件を一部緩和して保有をしていくリスクをプールして商業賠償リスクの全部または一部をシェアしていく協同組合として想定しています。
対象種目は商業賠償責任保険のみです。また同業種によって構成されるリスク・リテンション・グループや保険購入者団体のパーチェシング・グループの設立を認めます。さらにリスク・リテンション・グループは米連邦の州で営業免許を受けることで連邦内のすべての州で保険の引き受けが可能になります。
リスク・リテンション・グループはグループキャプティブの一種で設立州でキャプティブの保険会社または一般の損害保険会社としての免許を受けています。グループキャプティブと異なってリスク・リテンション・グループの引受の対象リスクは構成員の有する同種の賠償リスクに限定されます。またリスク・リテンション・グループは構成員の有する同種の賠償リスクに限定されます。またリスク・リテンション・グループは免許を受けた州での営業も可能になります。この点が複数の州で営業をする場合はそのすべての州の免許が必要とされるキャプティブとは違いがあります。
参考資料
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